egg life
作品名:「egglife」
ダンス作品
撮影:bozzo
受賞:SAI Dance Festival2021 Solo First prize
招喚:Macau CDE(Contemporary Dance Exchange)Springboard
●asamicro『egg life』作品評
「朝時間」をテーマに踊るasamicro
優秀賞/First Prizeのソロ部門は、asamicro『egg life』が受賞した。asamicro(本名:松井麻実)がダンスを踊り始めたきっかけは、とてもユニークだ。義務教育である小中学校の9年間は不登校児で、ひきもこもりの期間もあった。
しかし、友達と一緒に独学で踊り始めて、彼女はダンスに自分の居場所を見つけたという。SAIの審査会では「どんなアーティストにもそれぞれバックボーンはある。コンペでは純粋に応募作を評価すべきではないか?」という意見も出たが、実は応募作『egg life』にはそんな彼女の人生経験が色濃く反映されている。
白い円形のカーペットを敷き、横臥した状態からパフォーマンスは始まる。カーペットが卵白で、真ん中にいる小柄な
asamicroは卵黄を象徴している。無表情で放心したような目、しかし手足を浮かせてフリーズし、緊張感がある。やがて手先が微かに動き出すと、その動きは次第に大きくなる。上体を起こして股の間から手を出したり、カーペットの表面を指先で繊細に撫でたりする。立って素足で移動する時も、足音はしない。
技術的にはストリートダンスとコンテンポラリーダンスをミックスさせたスタイルだが、脱力した身のこなしから機敏にして柔軟、そして軽快な動きを展開するところが魅力的だ。身体の部位を細かく分解しながら、微妙なニュアンスを多彩なボキャブラリーで踊っていく。緩急のあるスキのないシーン構成にもセンスが感じられる。特に後半、カーペットの外に出てスピーディーにさまざまな動きを繰り出していく様子に、観客はただ単純に軽快に踊る身体を見ることの快感を抱くだろう。
asamicroは不登校時代、目を覚まして朝ごはんを食べ、家の外に出るのが苦痛だったという。『egg life』は、その頃の記憶と感覚をベースにしている。そして、現在彼女は「朝時間」や「生活」をテーマとした「朝ごはんダンス」というシリーズも始めている。卵の殻のひび割れはどれも同じではない。常に同じにはならないことから新しい明日に期待して、彼女は朝ごはんの写真を毎朝撮影し、Instagramに投稿することも続けている。また、彼女は昔の自分と同じ問題を抱えている子供達にダンスを教える支援活動にも取り組んでいる。『egg life』は、そうした彼女のダンスに対する姿勢が端的に表れた作品であり、今後もその活動に期待したいと思った。それは一部の愛好者や関係者で閉鎖的に充足している劇場が、ダンスを介して社会と向き合うきっかけづくりになるかもしれないからだ。
2021年6/17 堤広志(舞台評論家/SAI DANCE FESTIVAL 2021 審査員)
※韓国文化芸術専門ニュース「The Preview」掲載予定稿より抜粋